PET検査は苦痛がなく、多臓器のがんを早期発見できますが、高額な費用等の問題も

がん検診において画像診断は大きな役割を担っていますが、最新の画像診断技術の一つとして注目されているのがPET/CTです。PET(陽電子放出断層撮影)はガリウムシンチ、骨シンチと同じ核医学検査ですが、使用されるアイソトープに違いがあります。

がん発見率には限界がある

PETで使用されるポジトロン放出核種はサイクトロンで人口的に合成されるもので、半減期が短く、そしてブドウ糖など生理的に重要な物質に標識できるため研究・診断手法として優れています。

糖代謝測定で使用されるのはFDGです。正常細胞と比較してがん細胞は糖代謝が亢進しており、FDGが高集積します。FDG-PETは糖代謝画像であり、糖代謝の高い病巣を同時に検出します。またFDG^PETでは局所糖代謝を定量評価できることも長所の一つです。

PETは一度に広範囲を撮像でき、標的臓器が多いため、従来の検診では見逃される可能性のある様々な悪性腫瘍を治癒切除可能な段階で発見することができるのが最大の特徴です。

がん検診では検査の感度と特異度が重要となります。感度が低いと偽陰性が増加し、特異度が低いと偽陽性が増加することになります。がん検診で必ず行われる便潜血反応検査の感度は進行がんで60〜90%とされています。マンモグラフィーの感度は、乳房触診と同時に行った場合で73%となっています。

PETによるがん診断の感度は進行大腸がんで98%と高く、大腸ポリープは1.3cmを超えると90%、乳がんは1〜2cmで約70%、2cmを超えると80%以上です。肺がんの検出感度は92%で、特異度は90%と高くなっています。また膵臓がんは低く見積もっても感度は65%あり、食道がんでは壁深達度が粘膜下層を超えると80%を超えます。

一方、ブドウ糖をエネルギーとすることからFDGが集積しやすい脳はPETが不得意な臓器となっており、脳腫瘍のスクリーニングには向いていません。また、消化管の表在がんは腫瘍体積が小さくPETでは検出が難しく、腎臓・膀胱・前立腺などの泌尿器がんもPETは得意ではありません。

また、PETで腫瘍を発見するためにはある程度の体積が必要となり、1cmに満たないミリ単位のがんの検出をPET単独で行うには限界があります。また腫瘍の糖代謝が高いことも条件となります。

このため肺での胸部CT、食道・胃・大腸の内視鏡検査、乳腺でのマンモグラフィー、子宮頚部の擦過細胞診など、各臓器に特異的な検査と個別に比較した場合には、PETの感度は劣ります。またPET単独でのがん発見率は0.8%と、他の検査に比べて高い数値ではあるものの、PET単独でのがん検診を過信することはできません。

しかしCTによる肺がん検診では術後、肺に線維化があると見逃しのリスクがあり、高頻度に見られる肺陰影では良悪性鑑別の問題があります。乳がん検診ではマンモグラフィー陰性の乳がんがあります。大腸内視鏡では高齢者では侵襲が高くなるため、部位によっては見逃しが生じることがあります。

このような場合、PETを併用することで一つの臓器を重複して調べることができるため、見逃しリスクを低減させることができます。また費用対効果の側面から、従来のがん検診では対象としていない頭頚部がん、悪性リンパ腫、子宮内膜がん、卵巣がんなどもPETの対象臓器となっている点にもPETの存在意義があります。