マンモグラフィによる乳がん検診は受診率の低迷、読影医師の不足が課題

右肩上がりで増加を続けている乳がんは、国内で毎年約6万人が罹患しており、女性のがんの第1位となっています。年齢別に罹患率を見てみると、30歳代後半から増え始め、ピークを迎えるのは40歳代後半となっています。

乳房の変化を感じたら医療機関へ

乳がんは、乳管や小葉の中にがん細胞がとどまった状態の「非浸潤がん」と乳管や小葉を包んでいる基底膜を破って周囲の組織に広がった状態の「浸潤がん」に大別されます。

日本人の女性に多い乳がんは、浸潤がんとなっており、転移や再発リスクがが高いとされています。一方、非浸潤がんは転移を起こしていない早期のがんですので、適切な治療により完治も期待できます。

胃・大腸・肝臓などのがんと違い、乳がんは定期的な自己検診によって自分で発見できる数少ないがんです。自己検診でしこりを発見したら、ただちに医療機関を受診して精密検査を受けることが大切です。

問診・視触診による乳がん検診が死亡者数の減少につながらなかったことを受け、しこりで自覚できる前の早期乳がんを発見しようというマンモグラフィ検診が開始されました。

乳がん患者は30歳代後半から増加しますが、それでも40歳未満は乳がんになる人は少ないことと、40歳未満は乳腺の発達により、乳腺の異常が発見しにくいという理由からマンモグラフィ検診の対象は40歳以上となっています。

マンモグラフィと視触診の両方を実施する検診を受けた40歳代の約10%は精密検査が必要と診断されています。また、精密検査を受けた人の約2%に乳がんが発見されています。

一方、検診で「異常なし」と判定された人の0.00037%(=2700人に1人の割合)は1年以内に乳がんが見つかっています。これは読影を行った医師の見落としではなく、マンモグラフィをはじめとする画像診断には限界があるということです。したがって、検診の結果が「異常なし」の人も定期的に自己検診を行い、違和感を感じたら医療機関で診察を受けることが求められます。

マンモグラフィを撮影する際には、乳房の多くの部分を撮影するために、乳房を引っ張り出します。そして、撮影に必要な放射線量が少なくて済み、正常部分が撮影の邪魔にならず診断しやすいように乳房を板と板の間で圧迫してから、撮影を行います。

女性技師がマンモグラフィの撮影を担当する医療機関が増えてきているものの、欧米に比べて女性の放射線技師はまだまだ少ないのが現状です。男性の放射線技師に撮影してもらうのは恥ずかしい方は、女性技師が撮影を担当するかどうかを予め医療機関に問い合わせておくとよいでしょう。

マンモグラフィで撮影されるものには、乳がんのほか、良性で治療対象から外れるもの、良性と悪性の区別が難しいものもあります。検査結果で「異常あり」と判定されても、乳がんであるとは限らないので必要以上に不安を抱え込む必要はありませんが、「異常なし」の人と比べるとがんの可能性は上がるので精密検査が必要です。

マンモグラフィ検診によって欧米では乳がんによる死亡率を20〜30%減少させたというデータがありますが、欧米ではマンモグラフィを2年に1回のペースで受診する人が60〜80%にも達しています。対して日本では乳がんを経験した著名人の方を起用した様々な啓蒙活動や、医療バラエティ番組の影響により受診者は増加していますが、受診率は未だに20%代と低迷しているのが現状です。

また検診に必要なマンモグラフィ撮影装置、撮影技能資格のある技師、読影を行う医師の不足、かつ大都市に偏在しているため、公的検診の原則である「全国一律平等」とは程遠い現状となっており、このままでは乳がんによる死亡率を下げることは難しいという意見が出ています。

乳がんの増殖には、女性ホルモンが関係しているものが多いと考えられています。また、遺伝的な要因も少なからずありますので、母親、姉妹などが乳がんを発症したことのある人は、そうでない人に比べてリスクが高くなるため注意が必要となります。

乳がんは早期に発見し、治療を開始すれば、乳房を温存することもでき、治りやすいがんとされています。月1回の自己検診、1〜2年に1回のマンモグラフィなどによる定期的な乳がん検診を是非受けるようにしましょう。