下部消化管内視鏡検査なら、その場で生検や簡単な手術も可能です

肛門からカテーテル等で造影剤(バリウム)と空気を注入して、体位を変えながら大腸のX線撮影を行う下部消化管X線検査(注腸造影)。大腸壁に付着した造影剤でX線吸収率に差が生じるため、内腔の凹凸の違いがX線写真の濃淡の差が現れます。

消化管の様子

それにより大腸がん、大腸ポリープ、粘膜下腫瘍、炎症性腸疾患、感染性腸炎などの異常所見の有無がわかります。しかし、下部消化管X線検査は、大腸の内腔面の凹凸を見ているだけですので、この検査単独で確定診断がつくことは少なく、後述する内視鏡検査が必要となります。

検査前には大腸内を空にしておく必要があります。検査前には大腸の蠕動運動を抑えて撮影しやすいように鎮痙剤を注射しますが、緑内障、前立腺肥大、心臓病、糖尿病などに持病がある人は、鎮痙剤が使用できないケースがあるので、あらかじめ医師に申し出ておきます。

検査終了後は、排便をした際に白い便が出てきますが、これは検査前に注入したバリウムですので心配いりません。バリウムの影響で翌日くらいまで腹部の張りを訴える人もいますが、通常は1日で治まります。症状が治まらない場合は検査を実施した病院や健診センターに報告します。

X線で間接的に大腸の内部を見るのではなく、直接調べようというのが、肛門から電子内視鏡を挿入する下部消化管内視鏡検査(大腸ファイバースコープ)です。内視鏡を使用することにより、大腸内腔の色調や粘膜模様の違い、病変の存在にくわえて、質的・量的な診断を行うことも可能です。異常所見が確認された場合は、内視鏡の先端部に取り付けた器具で生検もできますし、その場でポリープを切除するなど簡単な処置を行なうこともできます。

脳梗塞や心筋梗塞などの持病があり、抗血小板薬や抗凝固薬が処方されている方は検査そのものは可能ですが、異常所見が見られた場合の生検や内視鏡的手術を実施できないケースがあります。病状次第で薬の服用を一時中止する場合と荘でない場合があるので、検査を受ける前に医師に確認します。

検査当日は、大腸の中を空っぽにして観察しやすくするために、腸管洗浄液(2リットル)を飲み、大腸の蠕動運動を止める鎮痙剤を注射します。X線検査の際と同様に緑内障や前立腺肥大症、心臓病などの治療を受けている方は、事前に医師に相談しておきます。

大腸は曲がりくねった構造をしているため、内視鏡を奥へ進めていく際に多少の痛みを伴うことがあります。組織に癒着が生じていると、強い痛みを感じる人もいるため、痛みを抑える鎮静剤を使用することもあります。副作用として眩暈などがおきることがあるので、鎮静剤を使用した場合は検査当日に車などを運転することはできません。