胃がんが多い日本では健診における上部消化管の検査が重要

主に胃がんの発見を早期目的とした健診の上部消化管の検査には、まずX線造影検査と内視鏡検査が挙げられます。近年は、ペプシノーゲン検査が胃がんの一次スクリーニングとして採用されるようになり、さらにピロリ菌検査や両者を組み合わせた健診方法も提唱されていますが、いずれも直接的な検査ではないため、画像検査と組み合わせて実施する必要があります。

ピロリ菌と胃がんの関連が注目

処理能力、効率、安全性や受診者の負担等を考慮すればX線検査がもっとも優れていますが、精度に問題があります。60年代に普及した間接X線撮影による胃がん検診によって、日本における胃がんの死亡率は大きく改善されました。

しかし、内視鏡が改善されて普及するにしたがい、胃がん検診に携わっていた多くの医師が内視鏡へと移っていきました。その結果、消化管X線診断や検査の教育を行っていた基幹病院での検査件数が激減して、十分な教育が行われなくなりました。そのため、胃がん検診で行われているエックス線検査の質も低下してしまった経緯があります。

従来の胃X線検診の画像は、造影剤の付着が悪い二重造影像で微細な病変を確実に診断することが困難な状況でした。これに対して、高濃度低粘性バリウム造影剤を使用して、二重増影法で胃の全域を隈なく撮影するのが新しい胃X線撮影法です。

高濃度低粘性造影剤は高いコントラストを得ることができるのが最大のメリットであると同時に、胃粘膜に付着した粘液を除去する効果が大きいことが二重増影像での微細病変の描出に大きく貢献しました。

一方、内視鏡による検査は、胃の中を詳細に観察できるとともに、新開発された拡大内視鏡や色素内視鏡などを用いることでX線よりも微細な病変を発見することができます。しかし、X線と内視鏡を比較する際、検査時間や検者のスキルが考慮されていないことが問題となります。

内視鏡で経験・スキルに富んだ検者が検査時間をかければ非常に小さな病変を発見することができるのは当然ですが、そのような検査では処理件数が大幅に減少して集団を対象とした検診は困難となり、そもそも熟練した検者を多数そろえることは不可能です。

任意型の検診ならば優秀な検査医を確保して、時間をかけて検査を行えばX線検診よりも優れた検査は可能です。また最近は被検者の負担が少ない経鼻内視鏡による検診が注目されていますが、経鼻内視鏡は通常の内視鏡よりも視野が狭く、遠景になるとか増力が低下するので検査医により熟練したスキルが求められるという問題もあります。

上部消化管の検診は胃だけでなく食道も対象となります。胃がんに比べて食道がんの発生頻度は低いものの、予後が悪いため早期の発見が重要です。食道がんの発見にはX線よりも内視鏡のほうが長けており、色素内視鏡や特殊光観察が有効です。喫煙、アルコール、頭頚部がんなどの危険因子についても研究が進んでおり、高リスク群の患者さんについては内視鏡検査を実施することも良い方法です。